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雨音を聴くときのように...
by clover-f
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特別なお皿

特別なお皿_b0120001_639697.jpg

芸術の森からの帰り道

とあるお店で,一枚のお皿に出逢いました

そのお皿は,「サービス品」と書かれた箱の中
「お買い物のお客様に,ひとつサービスいたします」
そんなお皿の一枚でした。

けれども,そのお皿の裏の部分には,立派な値段が貼られています
器のことは,詳しくは分からないけれど,
そのお皿は,それくらいの価値があると思ったから,
「そっか,これは,間違えてこの箱の中に入っているんだな」
そう勝手に決め込んだ私
お店の人に「これ,ください」と,お願いしたのです。

「これは,売り物じゃないのよ」 首を横に振るお店の方

「傷でもついてるんですか?」
「どうしても,ほしいのです」
「お代,お支払いいたします」 引き下がらない私

少し困ったお店の人は,しばらくして,
ご主人と思われる方を呼びに行きました

奥から出てこられたご主人,
「ごめんね。これは,売ることはできないんだよ」
同じことをおっしゃいました


そしてご主人は,そのお皿が,
息子さんである陶芸家の作品だということを話してくれました
その息子さんの初期の作品で,仕上がりに納得いかなかった彼は

「そのお皿で,お金をいただかないで欲しい」

そうご主人に,強く,伝えたそうなのです。
それが,売ることを拒んだ理由だったのです


陶芸家としてのプライド
ものを作ることのの誇りと重み...
息子を,誰よりも理解する父

そして,私といえば,
そのお皿が欲しいだけに,ついでで他のものを,買えない...

その気持ちには,もう,かなわないなぁ...

半分,あきらめかけたとき

「それでは,今日の記念に...」
ご主人は,私にそのお皿をくだったのです

「何も買わなくていいからね。大事にしてくれればいいからね」
「また,こちらに来たときに,寄って行ってね」

一瞬で,心がとっても温かいものに,包まれた気持ちになりました。

そのうえ,
「割れちゃ,いけないからね」
しっかりと,ぷちぷちで,包んでくださいます


父にとっては,息子が作ったお皿は,息子そのものなのでしょう
息子の気持ちが込められたそのお皿を,
幼子に触れるように,優しく,柔らかく,包みました


父親の気持ちと,息子の気持ち
私は,その思いが込められた,彼の動作を
ただ,じっと見つめていました。
 
そして,そのお皿に込められた,たくさんの想いを
受け継いだような気持ちになりました


とても温かい気持ちになって,お店をあとにします
するとご主人は,私が見えなくなる,ずっと向こうの曲がり角まで
静かに立って,見送ってくださいました


そんな気持ちの持てる人に,私も,なりたい


そのお皿は,私にとっても,そのたくさんの気持ちを忘れない,
特別なお皿になりました。





+++



帰宅してから,彼のHPを拝見すると...唐津焼の陶芸家さん!
彼のページには,その想いがたくさん,込められていました

「もてなしの心」を器にと...,茶道も嗜まれていることを知って,びっくり
同じ裏千家で学ぶ方との,新しい出会いにも,感謝です。

彼のブログに共感した私

お手前で使う,初めての,私のお茶碗は
彼からいただくことを,決めたのです...
by clover-f | 2007-11-02 07:00 | であうこと
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