雨音を聴くときのように...
by clover-f
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秘密の温泉の話。2
b0120001_10112490.jpgようやくたどり着いた,細い山道の奥の温泉。

車を駐車場に止めますが,線がひいてないから,止まったところに止まるような駐車場です。車から降りると,ざぁざぁと,川の音が聞こえます。夜のそこは真っ暗だから,姿は見えませんが,ずいぶんと急に流れている川のよう。

灯りは,温泉の入り口のドアからほんのり漏れる,橙色のあかりだけ。その灯りを目指して,駐車場から温泉道具を抱えて歩くこと,50歩ほど。

その温泉は古びた温泉旅館になっていて,小さな縁側には,薄いピンクの公衆電話がちょこんと正座しています。窓の枠も木でこしらえてあり,強い風が吹いたら,ガタガタと,それは大きな音をたてそうな窓です。

温泉の入り口には,小さな椅子が,たばこ屋のおばちゃんみたく,当たり前の顔をして座っています。そこには,昔はお菓子が入っていたであろう白い箱が置かれてありました。箱の中の小さな紙には,こう書かれています。

おとな150円
こども100円

宿主が,夕ご飯を食べている時や,部屋の掃除をしているときなど,ここにお金を置いておくようなのです。

「私は気にしませんから,どうぞご自由に入って行ってくださいね」

その小さな箱から,温泉宿の気さくな気持ちが伝わります。それに150円だなんて。期待に胸を膨らませると同時に,その安さには,何か秘密があるのかも...

不安と期待のまま,100円玉と50円玉をチャラリと2つ置いていきます。
「女」と書かれたドアを探し,隣の建物にあった,その文字と,ずいぶんと古びている扉の姿。

錆と,湯気のしみと,いろいろな物が混ざり合った風合いの扉。
一発足で蹴らないと,扉がスムーズに開いてくれなさそうな,扉。

がらり。
恐る恐る,横に開くと,むわりとのどの奥に届く,硫黄の匂いたっぷりの湯気。
そしてそこは,大正時代の銭湯を思わせる,脱衣所がありました。


つづく。
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by clover-f | 2009-03-08 22:06
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