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雨音を聴くときのように...
by clover-f
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幼子のために。
仕事中に後輩が,「みてください~」って,半分泣きながら言ってくるので何事かと思ったら,彼女の手の中には,ハンドタオルにくるまれた,ピンポン球ふたつ分くらいのツバメの赤ちゃんがいました。

どうやら,巣から落っこちたらしいのです。

ずっと昔。
まだ私がほんとに小さな頃に,すずめが同じようになっているのを見つけて,飼ったことがあったんだけれど,やっぱり死んでしまったので,そのことを思いだして,ツバメも同じかな。と思い「あぁ...」と,小さく言葉を返しました。

でもその後輩。

えさをやろうと,バッタをつかまえてくるのです。しかもとっても大きいやつ。
必死さと,バッタの大きさが比例しています。
それがちょっとかわいくて,笑ってしまいました。


それじゃだめだということになり,畑にみみずを探しに行ったり,落ち葉置き場に小さな虫を探しに行ったりと,あきらめずに何とか食べられそうなものを集める彼女。
カンカンとお日様が背中に刺さってくるのにもかかわらず。



でも,割り箸であげたり,ピーピーお母さんツバメのモノマネをしながらあげるのだけど,小さなツバメは頑固として,への字口。


このままじゃ,おなかがすいて,死んじゃうよ。


もう,なすすべがないので,動物病院に電話。なんとツバメも見てくれるということだから,連れて行きました。


「人間が,育てることもできるけれど,独り立ちできずに,死んじゃうよ。」
「できれば,巣の近くで,猫にいたずらされないところに置いておいて。お母さんがえさをあげるかもしれない。この子を生存させたければ,道は,ひとつだよ。」

戸惑うふたりに,なんて,優しく,頼もしい言葉。
動物病院の先生は,いつも優しい。


超特急で仕事場に帰り,巣の場所に戻りました。
巣の周りでは,お母さんツバメがものすごいスピードで飛び回って,ピーピー!と何度も何度も泣いています。


すると,
ずっと無言でへの字口だった赤ちゃんツバメ。

「ピーピー」


お母さんを呼ぶのです。
あんなに頑固に泣かなかったのに。

「ピーピー」

「ピーピー」


弱々しくも,しっかりと。お母さんを呼ぶのです。




通りかかった同僚が,
「いいっすよ。おれ,登りますよ。」

あれやこれやと考えた末,7メートルほどもある高い場所にはしごをのばして,
「おれ。高所恐怖症っすよ」「でも登りますよ」


ぷるぷると震えながら,でも手は優し包みながら,赤ちゃんツバメを巣に戻したのです。



その瞬間,
お母さんツバメは,急いでどこかへ飛んでゆきました。

本当に急いで,飛んでゆきました。



大きな口を開けた,幼子のために。
by clover-f | 2008-07-09 22:22
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